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    暫くの沈黙の後。   静かな留火の声に、優留は顔を上げた。   いつもの…端正な留火の顔が、 沈んだ夕日の薄暗い光を受け、 柔らかな美しさに輝いて見える。     その怖いくらいに整った顔も、 昔よく遊ばせてくれた白くて長いフワフワの耳も。 怖いけど、甘えるといつでも撫でてくれる優しい手も。   本当は昔から大好きだった。     親として見た事なんて一度もないし…。 初めて留火を見かけた時。   『なんてきれいなんだろう』   そう思って見つめた。     悲しく思ったのは、きっと絶対に手に入らないものだと知っているからだったのに。    
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