844人が本棚に入れています
本棚に追加
暫くの沈黙の後。
静かな留火の声に、優留は顔を上げた。
いつもの…端正な留火の顔が、
沈んだ夕日の薄暗い光を受け、
柔らかな美しさに輝いて見える。
その怖いくらいに整った顔も、
昔よく遊ばせてくれた白くて長いフワフワの耳も。
怖いけど、甘えるといつでも撫でてくれる優しい手も。
本当は昔から大好きだった。
親として見た事なんて一度もないし…。
初めて留火を見かけた時。
『なんてきれいなんだろう』
そう思って見つめた。
悲しく思ったのは、きっと絶対に手に入らないものだと知っているからだったのに。
最初のコメントを投稿しよう!