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「ちょっと、どういうことよ!」 彼女にはとても聞き流せなかった。どこの誰だか知らない男に、そんなことを言われても現実感はなかった。むしろ、怒りの感情が先だ。 「ま、まあまあ。落ち着いて下さい。まだ、そうと決まった訳じゃないですし、あくまでも可能性ですから……」 可能性だから、冷静に話をしよう。そう男は言うが、彼女の興奮は止まらない。 「では、木下梨絵が誘拐されたのですか?」 彼女を制止し、彼が割って入った。いかにも体育会系の男が、不機嫌そうに彼を睨んでいる。 「失礼ですが、あなたは?」 「ああ、井本薫という者です。職業は」薫の微笑み方はタレントを想像させる。「探偵です。藤田さんの家で、世話になっていまして……刑事さんの話だと、最後に会ったのが私たちになりますね」
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