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少女はばつの悪そうな、気恥ずかしそうな、そんな心情なのだろう。周りの友達に救いを求めるように視線を泳がす。
「いいね、飛び込み歓迎」
そう声を掛けると少女は照れ笑いの様な可愛い顔を見せる。
ちょっとした既視感がささやかながらも俺の気持ちを動かす。
そうだ、夢の続きなんだろう。例えばこの少女が肩口まである黒髪で小さくて、あの時と同じように制服の上着を腰に巻いて。
まるで君はサクラに似ていて。
有り得ない。わかってる。彼女のハズがない。理解している。しかし、目の前にいる少女が、いや、彼女を写した俺がそれを否定したがっている。
曲目が終わる。
西日が射し込んで肌寒い。最初はおじいちゃんに聴かせていただけの観客が最後には学校帰りの学生も巻き込んで二十人ぐらいに囲まれている。
ギターケースの中にはおじいちゃん達が入れたささやかな気持ちがちらほら。
「ご静聴ありがとうございました」
拍手は控え目だが一人一人がしっかり叩いてくれている。腕が気だるいことも気にならないぐらい気持ちは充実していた。
観客が一人、一人と帰路に着く。感謝の言葉や有難い感想を投げ掛けて。
最後に彼女を含む三人が残ってくれていた。
よく見ると友達の方には見慣れたケース。
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