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黒いポリエステルの編み目。中はエレキギターだろうか?
もう一人はスクールバッグの中に木目調のドラムスティックが顔を出している。
「へぇ、ガールズバンドか」
俺の声に緊張したようにたじろぐとドラムの少女が上擦った声で
「は、はいっ」
と答える。それが可笑しかったのか二人がクスクスと笑う。
「お兄さんのギター、カッコ良かったですっ」
「…それに上手い」
緊張が解けたのか二人が声を掛けてくれる。
「そう?ありがとう」
「あの、失礼ですけど」
たぶんボーカルだろう彼女が前置きを置くと息を吸い込んで吐いた。
「噂のギターマンさんですか?」
…言ってる意味がわからない。どう反応すれば?考えるよりも先に言葉が出る。
「え?何それ」
「え?神出既没でギター一つで何処でも演奏するって言う…」
それは、学園七不思議的な話題なのか?考えるよりも聞いてみた方が早いだろう。
「へぇ…それってどんな人?」
その言葉に三人が顔を見合わせる。そしてドラムの娘が俺を指差す。
「革のジャケットに」
次にギターの娘が、
「赤いアコースティックギター…」
そして最後に戸惑いがちにボーカルの娘が、
「の男の人って…」
…どう聞いても俺、か。
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