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成る程、どう聞いても俺だ。心当たりが有りすぎる。
「それでそのギターマンに逢えるとなんかイイコトあるの?ほら、そのテの話にはありがちだよね」
「はい、その」ボーカルの娘が躊躇った視線を友達に向ける。
助け船かギターの娘が口を開いた。
「…えっと、ギターが上手くなる悪魔に逢える、らしいんです」
悪魔、ね。これはまた随分とファンタジーな逸話がついて回っているようだ。
「ギターが上手くなるかどうかはわからないけどね、悪魔の正体はこれの事かな?」
弦を弾くとゆっくりと弾き始める。その曲は息苦しいまでの緊張感と背筋が震えるような存在感を体現させる。
「…これが、悪魔?」
足元を震わせているのがわかる。この空間の熱を吸い取るように、黄昏から光を奪うように…この空間を、心の渇望を体現する。
そうか、輝いている人間からすれば『沈み引き込む』曲は確かに怖いものかもしれない。
悪魔デモイイ
コノ暗闇ヲ照ラシタイ
コノ渇キヲ満タシタイ
確かにそれは悪魔に堕ちていく人なのかもしれない。もしくは人の皮を被った悪魔なのかもしれない。
「たぶん、これが悪魔の正体だよ」
音から解放された少女たちにはどう映っただろう?
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