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弦を弾く。音は大丈夫の様だ。
さて、いつもの様に先ずは軽めにサイモン&ガーファンクルから。
ゆっくりとコードを押さえ始めると散歩中のおじいちゃんが不思議そうにこちらを見つめていた。
その視線に笑顔で会釈すると嬉しそうに手を挙げてくれる。
別に自分で作った曲を弾いたりはしない。童謡やCMソングなどで挙げられている分かりやすい曲だけを弾く。子供でもわかるようにご年配でも歌えるように。
暗い曲は強弱をつけたアップテンポにしたり、激しい曲はわざと緩急を着けて遊ぶ。
暫くゆっくりと弾いていると先刻のおじいちゃんが杖をつきながらゆっくりと歩いては隣の囲いに座る。
「はぁ、近くで聴かせておくれよ」
「ええ、どうぞ」
おじいちゃんは嬉しそうに眼を閉じた。
そしてまず一曲目が終わる。するとおじいちゃんはパチパチと控えめな拍手をくれる。ほんの少しこそばゆい感じだ。
「何かリクエストはありますか?」
「んんっ、あんまり歌をしらなんだ、好きに弾いておくれ」
と申し訳なさそうに言うもんだから聴いたことのありそうな曲の代表格を弾き始めた。
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