クロスロード

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ビートルズにカーペンターズ等、名前は知らなくとも昔の映画やドラマの主題歌、CMソングで聴いたことのありそうな曲をひたすらに弾き始めた。 おじいちゃんは体を揺らし始めてそのリズムに乗っているようだ。 「ああ…聴いたことがあるなぁ」 嬉しそうに呟やかれるとこちらも嬉しい訳で。おじいちゃんの為に弾いていた曲が終わる頃には公園を散歩していた他の方々が足を止め耳を傾けていた。 「ありゃ、気が付けばこんなに」 ざっと見渡すと8人が距離疎らに体を向けている。 「えっと、ご静聴ありがとうございます」 隣のおじいちゃんが控えめにパチパチと拍手をすると、釣られて回りが暖かな拍手をくれる。 「大した事は出来ませんがお耳汚しでなければ…」 再び弦を弾くと拍手は止んだ。音は静かに、緩やかにバラードを奏でる。 エリック・クラプトンの『チェンジ・ザ・ワールド』、ギターもさることながらエリック・クラプトンの力強い声が何とも心地好い曲である。 俺は音に身を預けるように眼を閉じた。そして、音と共に言葉を紡ぐ。 するとそれに混じる様に奥から少女の歌声。俺は眼を開けてその方向に顔を向けるとばっちりと高校の制服だろうか?眼が合った。
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