第三章 ―借金―

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  『もしもし……?翔ちゃん?』 「…………もしもし」 カナちゃんは戸惑っていた。ま、彼氏と思って電話して女が出たとなれば、誰だってそうだろう。 私も痛いくらいに心臓が脈打っていた……。 「カナさんですよね?」 『……はい』 「翔太とは付き合ってるんですか?」 『はい』 「いつからですか?」 『○月○日からです……』 この時点でもう泣きそうだった。でも泣くわけにはいかないと、グッと感情を抑えて話しを続けた。 「翔太とは、キスやその先……身体の関係はありますか?」 『……はい』 取り乱したかった。泣いて喚いて暴れたかった。 刃物で心臓を一突きにされたような、そんな衝撃だった…… 泣くのを堪えるのに必死な私に、彼女が話しかけてきた。 『あなたは誰ですか?』 「翔太の妻です」 『え……?いや、だって……。本当ですか……?』 「はい。子供も居ます」 彼女もまた、大きなショックを受けたに違いない。 暫くお互いに言葉が出て来なかった。  
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