第三章 ―借金―

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  当時の翔太の職場は、三畳あるかないか程の小さくて狭い店舗だった。 もちろん仕事中はずっと一人だ。 閉店の頃合いを見計らって、お店に入った。奥に居た翔太は、私達には気づかず作業をしていた。 ドカッ いきなりの音に、さぞ翔太はびっくりしただろう。私が店の壁を蹴っ飛ばしたのだ。 私を確認した翔太が、ゆっくりと姿を現した。 「……何やってんの?」 「入ってきて」 私は、外で待機していたカナちゃんを呼んだ。 翔太は動揺からか、その視線が宙を舞って揺らいだ。 「話したい事があるんだけど」 「え、いや……」 「もう言い逃れできないからね」 「…………閉め作業が終わるまで待って」 翔太はどんな気持ちで残りの仕事を片付けていたのだろう。 人を騙す事、裏切る事…… それがどんな結果を招く事となるか、身を持って体験してたはずだったんだけどな…… 「二度と浮気はしない。一生をかけて償う」 そう言ったあなたを信じたかったのにな……  
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