第五章 ―罪と罰―

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  借金から解放されてからも、順風満帆とは行かなかった。 翔太の勤め先が、業績悪化により次々と店舗を閉鎖せざるを得なくなっていた。 颯太の言語発達遅滞が診断されたのもこの頃だった。 幼稚園入園を目前に控えても、自分の名前すら言えなかったのだ。 オムツさえも外れていなかった。 不安はたくさんあった。 ちゃんと、皆と一緒に幼稚園の生活を送れるだろうか? 先生の言う事を聞かなくて、困らせたりしないだろうか? いろんな事を考え、考えてもどうしようもできない現実。 何事もなく幼稚園生活を楽しんで、何か刺激を受けて成長する糧になってくれれば……と祈るだけ。 それでも初めての制服は、とても幸せな気分にさせてくれたよ。 きっとこの時は、翔太も同じ気持ちだったと思う。  
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