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その後、10分足らずで家に帰ってきた翔太は大きな音を立ててドアを開けたり、子供たちが居るにも関わらず、その目の前で物にあたっていた。
そして自分の服などを鞄に詰め込み出した。
「どうするの……?」
「出てくに決まってるだろ」
「子供たちは……?」
「さぁ。実家帰れば?」
「お金とかもどうするの……?」
「夢の借金のはちゃんと返せばいいんだろ」
そう言って出て行こうとする翔太を必死で止めた。
言葉で何を言っても無駄だって分かっていた。だからその腕を離すまいと掴んでいた。
『女に暴力を振う男は最低』
これは翔太の口癖だった。
そして、殴る蹴るなどの暴力は一度もなかった。
それはこの時も同じで、突き飛ばされそうになったりはしたけれど、私も引かなかった。
翔太との電話が終わってからすぐに、義姉からも連絡があった。
翔太を見失ってしまった。連絡はなかったか?と。
私は翔太がうちに向かっている事を話した。とにかくこのまま翔太がどこかに行ってしまって、消息が分からなくなる事は何としても避けたかった。
「お前マジでキモイ」
「これ(私の手)邪魔。離せ」
「てめぇほんとウザいんだけど」
私の顔はきっと涙でぐしゃぐしゃで、翔太からしてみれば、さぞ醜かったんだと思う。
だけど、何を言われても私は翔太の手を掴み続けた。
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