第六章 ―義姉と義兄―

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  だけど、やっぱり翔太は帰っては来なかった。 年末も差し迫った頃、私は少しでも稼ぎたくて大晦日も3日も仕事を入れていた。 1か月以上も前から翔太にはこの日はこども達を見てて欲しいと、お願いしていた。 「年末年始が休みになるかは店次第だから、わからない」 「年末年始も店は営業するから正月休みはない」 そう言われた、この年の終わり…… 直前になってこども達も見れない、無理だと言われてしまった。 この状況を見兼ねて、2日間ほど義姉家族が子供を預かってくれた。いろんなところで、感謝してもしきれないほど助けて貰っている…… そして迎えた大晦日。 こども達も寝てしまって、1人テレビから聞こえてくるカウントダウンの声に耳を傾けていた。 今までの人生で、一番淋しいと思える年越しだった―― そして、もうこんな気持ちは二度と味わいたくないと思った。 元旦は、毎年家族で義母のお墓参りに行っていた。 だけど状況が状況だったため、それはなくなった。 賑やかに過ごしていたお正月……この年は、こども達といつもの休みとなんら変わりない一日が過ぎていった。 でも、近くの神社に子供たちと手を繋いでお参りにだけは行った。 厄除けのお守りを2つ買って…… 『厄』が退散して、また元の家族に戻れますように…… そんな願いを込めた気がする。  
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