第六章 ―義姉と義兄―

19/21

4332人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
  一度目、二度目ともに電話に出る前にすぐに切れてしまった。 そして三度目――…… 「もしもし?」 『…………』 「もしもし……?」 『あの……ゆめさん……』 確かに私の名前を呼ばれた気がした。そこで突如電話は切られた…… 私の名前を知っている。 非通知でかけてきた相手は女の子。 頭を掠めたのは考えたくもない、けれども一番可能性のある事だった。 『不倫』 一瞬にしてその考えに囚われた私は、そのまま寝ている翔太の傍から携帯を持ち出した。 そこで目にしたのが、数々のサクラという女性とのメールだった…… たくさんのハートに彩られたメール。 それは決定的な証拠とは言えなかったと思う。まぁ『大好き』とか『淋しい』とかあったからそう思ってしまうとは思うけれど……。 ただ過去に遡ってまでは確認せずに、何通かのやり取りを見ただけで頭に血が上ってしまった私は、寝ている翔太に平手打ちをした。 『暴力女』 『ウザい』 『キモイ』 そんな事を散々怒鳴られて、もう二度と帰ってこないと言いだした翔太。 「子供たちはどうするの……?」 「会いたいけど、あなたに会いたくないから会えないね」 「もう一生会わないつもり?」 「仕方ないだろ」 私はどうする事が一番いいのかなんて、分からなかった。 悲しさや苦しさや悔しさ……いろんな感情が涙となって溢れ出す。 子供たちにとって『パパ』は必要なのか……。離婚してもやっぱり会えた方がいいんじゃないか……。 頭の中はぐちゃぐちゃだった。  
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4332人が本棚に入れています
本棚に追加