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一度目、二度目ともに電話に出る前にすぐに切れてしまった。
そして三度目――……
「もしもし?」
『…………』
「もしもし……?」
『あの……ゆめさん……』
確かに私の名前を呼ばれた気がした。そこで突如電話は切られた……
私の名前を知っている。
非通知でかけてきた相手は女の子。
頭を掠めたのは考えたくもない、けれども一番可能性のある事だった。
『不倫』
一瞬にしてその考えに囚われた私は、そのまま寝ている翔太の傍から携帯を持ち出した。
そこで目にしたのが、数々のサクラという女性とのメールだった……
たくさんのハートに彩られたメール。
それは決定的な証拠とは言えなかったと思う。まぁ『大好き』とか『淋しい』とかあったからそう思ってしまうとは思うけれど……。
ただ過去に遡ってまでは確認せずに、何通かのやり取りを見ただけで頭に血が上ってしまった私は、寝ている翔太に平手打ちをした。
『暴力女』
『ウザい』
『キモイ』
そんな事を散々怒鳴られて、もう二度と帰ってこないと言いだした翔太。
「子供たちはどうするの……?」
「会いたいけど、あなたに会いたくないから会えないね」
「もう一生会わないつもり?」
「仕方ないだろ」
私はどうする事が一番いいのかなんて、分からなかった。
悲しさや苦しさや悔しさ……いろんな感情が涙となって溢れ出す。
子供たちにとって『パパ』は必要なのか……。離婚してもやっぱり会えた方がいいんじゃないか……。
頭の中はぐちゃぐちゃだった。
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