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こちらへ向かって走って来た男は、あるバーの看板の前で急に立ち止まった。
息を切らせながら、看板の名前を確認する。
黒い看板には、白い文字で“シグナル”と書かれている。
看板の名前を確認すると、一つ頷いてから、細くて急な階段を上がって行く。
階段を上がって行くと、黒いドアがあった。
ドアの横にも“シグナル”の看板がある。
肩のアルミバッグを持ち直してからドアを開けると、人々のざわめきが、洪水の様に溢れ出した。
店内に入って辺りを見回すと、奥にあるテーブルに座る六人の男のうちの一人が気付いて、笑顔で手招きをした。
男は、笑顔で右手を上げてから、テーブルへと歩み寄る。
「遅いよ」
手招きをしていた一人が、怒った様に言った。
「ゴメン。撮影が長引いちゃって」
撮影―と言う事は、バッグの中身はカメラだろうか?
バッグを足下に置くと、重たそうな音がした。
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