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そう言った御神がゆっくりと立ち上がった。
「ふぅ・・・ぺんぺんありがとうね、だいぶ痛みもひいたよ」
「いえ・・・先輩、氷で冷やした方がいいですよ」
御神主任から濡れタオルを返された章が、未だ心配そうにそう勧める。
なかなか強めに殴られたらしく、彼女の顔はやや赤くまだ腫れていたのだ。
「バカいわないでこれから仕事なんだから!さぁ、みんな張り切ってやるよ!」
御神主任がみんなを呼んで作業を始めた。
「さて・・・」
「あの、小野田章君!」
作業に向かおうとした章が、タイヤに呼び止められた。
「ああ、瓜那さん!」
「あの、これさっきのお礼・・・」
タイヤが恥ずかしそうに、章に紙袋を渡して格納庫から立ち去った。
「・・・え?」
「へぇー・・・ぺんぺん、良かったじゃないか」
御神主任が一部始終を見ていたらしく、整備士仲間やその場にいたパイロット達と章をからかい出す。
「章、お前いつタイヤと仲良くなったんだ?」
「タイヤ?」
純平にそう声をかけられて、章がキョトンとした顔で首をかしげた。
「あの娘の事かい?」
「そそ、竹がブレーキ痕みたいな面だって言ってさ・・・」
御神主任に純平がそう答える。
「タイヤ・カタイヤって、フルネームもつけていたわ」
「竹ぇ・・・」
さらに綾子がそう補足すると章が軽く拳を握り締めながら、名付け親である友達の名前を恨めしそうに口にする。
「アイツらしい、失礼なあだ名をつけたもんだね・・・一辺、世界人権裁判所で裁かれた方がいいよアイツは・・・」
御神主任と章がため息をついたが、妙にタイヤというフレーズが決まっていたせいか、顔がにやけてしまう。
「さあ、作業作業!・・・純平、綾ちゃんお疲れ!」
「お疲れっす」
「お疲れ様です」
純平と綾子の二人が格納庫を後にした。
「!」
何気なく紙袋の中を見た章が目を丸くした。
『これは・・・デートの誘い?』
(月面基地)
地球連合軍軍人でかつて久野元帥を始めとした柿崎大将、後川大将らと大戦を勝ち抜いてきた、歴戦の勇者であるディオン・ゾフ大将が司令官を勤める月面基地に屯田兵の陸奥は帰還を果たしていた。
「・・・さすが、後川の指揮する部隊だ・・・被害率は5パーセントとはまったく、見事だと思わないか?フロン准将」
ゾフ司令官が報告を見ながら、自分の副官であるジャンロイジ・フロン准将に尋ねる。
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