第一章屯田兵

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「は!・・・艦内に宇宙怪獣が侵入しても見事に切り抜けられるのは、地球連合軍でもヴォルフス艦隊司令官のルディ中将と後川大将ぐらいですな」 「ああ、まったく頼りになる連中だ」 「してゾフ司令、例の話しはどうなったのですか?」 フロン准将が思い出したようにゾフ司令に尋ねた。 「・・・ああ、敵の本拠地を見つけて攻略する作戦か・・・」 ゾフ司令が呆れながらつぶやいた。 今、地球連合軍内部では正体不明の宇宙怪獣を全滅させんという動きが強くなり、軍事政権はもはや過激派と呼ばれるグループが主導権を握っているのだ。 「敵の正体は宇宙怪獣という事ぐらいしか、未だわかっていないんだ!・・・現状で本拠地全滅なんか、不可能だとシュウォーツァーの奴だってわかっているはずだ!」 ゾフ司令官が舌打ちしながら、語気を強めてフロン准将に答えた。 シュウォーツァーとは地球連合軍の元帥で、今現在軍事政権のトップに君臨する過激派のリーダーなのだ。 彼は常日頃から主戦論を唱えており、雄弁で巧みな演説により地球の人民のほとんどが、今回の彼の提唱する宇宙怪獣本拠地全滅の作戦を支持しているのだ。 「しかし、近いうちにヴォルフス艦隊に宇宙怪獣本の拠地探索任務がくだるという話しもありますし」 「ああ・・・だが、地球連合軍議会には慎重派の久野元帥がおられるんだ・・・あのお方が、不利と判断する限りシュウォーツァー元帥も強行には出られまい」 ゾフ司令がそう答えながらも、内心ではシュウォーツァー元帥が力を強めて来ている事に不安を抱いていた。 もし、シュウォーツァー元帥が今強行に出るとしたら、世論の大半が反対するだろう・・・。 しかし、もしヴォルフス艦隊が敵の本拠地や正体を突き止めてしまったら・・・地球連合軍の全面攻撃を回避はできないのではないか?久野元帥お一人の発言ではもう押さえきれないのではないか? その懸念がゾフ大将の頭から離れないのだ。 「久野元帥に誰か有力な支援者がでればいいのだが」 「フランシスカ・バロイニ大将は確か数年前に退役なさってましたが、議会に復帰しないのでしょうか?」
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