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「俺は屯朋高校の生徒で、技術者の小野田章っていう・・・浅破さん、君も水を飲むかい?」
「ええ、いただくわ」
章から彼女が水を受け取った。
『どこかで見たことがあると思ったら、彼女は竹達が言っていたタイヤじゃないか!』
章が思い出したように瓜那・・・友達がタイヤと呼ぶ彼女を見た。
「?・・・私に何かついてる?」
「い、いや」
タイヤに視線を気づかれた章が、慌てて目をそらした。
「ねぇ・・・私達、ここから出られるのかな?」
「・・・戦闘が終了しないと、無理だろうな・・・」
「・・・」
章の返答にタイヤが黙る。
「でも、こんな手頃なスペースの部屋があって、ラッキーだよ?・・・通路で非常用シャッターがしまったら、通路に閉じ込められていたんだから」
章が笑ってタイヤにそう言う。
「そっか・・・私達、ラッキーなんだね」
タイヤも先ほどまでの不安な顔から一変して、明るい顔を章に見せた。
「そうそう、ラッキーだよ・・・それにエア漏れしているカタパルトで、助かったんだしねお互い」
「ありがとう、章君のおかげだね」
タイヤが笑顔で章に感謝をのべた。
「いやいや、運だよ浅破さんの」
「瓜那って、呼んでくれていいよ、章君」
「・・・」
タイヤにそう言われ、一瞬章が戸惑う。
「・・・無理・・・かな?」
「いやいや!無理じゃないよ!・・・じゃあ、浅破さんも俺の事は章って呼んでくれ」
タイヤが不安そうな顔をしたため、章が慌ててそう答える。
「う、うん!わかった章君!」
「・・・」
「・・・」
二人に沈黙が訪れる。
しばらく黙ったまま互いは見つめ合い、リアクションに困っていた。
「・・・ぷ!」
堪えきれずに章が笑った。
「言ったそばから君づけだよ!!浅破さん!」
「章君だって、浅破さんって呼んでるよ!」
二人がいつの間にか自分のおかれた状況を忘れてしまったように笑いまくる。
「・・・章君が技術者ってことは、格納庫に勤務してるの?」
「そうだよ!・・・浅破さんは?」
「私はブリッジの勤務・・・だけれども事務みたいな仕事だから、いつも行ったり来たりするぐらい」
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