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しかし静止されて黙る高山ではなかった。
「隊長だからこそ!!あの援護射撃の外し方はないじゃないですか!!」
「さっきから、うるせぇぞ!!」
高野たちの間から顔を出して高山が那須八にそう言い放つと、那須八が高山に掴みかかり殴ろうとした。
「!」
「!?」
御神が高山が殴られる寸前に二人の間に割って入る。
「うぅっ!」
乾いた肌がバチーンという音を立てながら、御神主任は床に倒れた。
「先輩!!」
「や、いけねぇ!・・・すんません!」
「大丈夫ですか!!」
みんなが御神に群がる。
那須八もまたしまったという表情になり、やや青ざめながら彼女の顔を覗き込む。
「いたたぁ・・・やっぱり、女の子が間に飛び出して、拳がピタッと止まれるのはアニメや漫画だけだねぇ」
御神主任が痛そうな頬をかるく抑えながら、二人の気持ちを抑えるために涙目で笑って見せた。
「せ、先輩・・・」
「那須八、あんたは隊長なんだから冷静にならなくちゃ」
「すんません」
那須八が申し訳なさそうに御神主任に謝った。
「すいません」
高山も御神に深々と頭を下げ、きびすを返したように立ち去った。
「ふぅ・・・」
「先輩大丈夫ですか?」
章が心配そうな表情で、御神主任に塗れタオルを差し出す。
「いつっ・・・ありがとう」
御神がタオルを頬にあてながら床にしゃがみこんだ。
「高校すら卒業せずに、こうも最前線で正体不明の敵と膠着状態を展開していたら、互いにギスギスしても仕方ないよね」
御神がそう言って笑い、那須八達のケンカを仕方ないと許す。
「仕方なくなんかないですよ!・・・みんな同じ、頑張ってるんです!高山ならいざしらず、隊長である那須八があんなに・・・」
「ぺんぺん!」
御神主任が少し厳しい表情で憤慨する章を見る。
「あんたの言う事は正しいよ・・・ただ、那須八も高山も反省したんだ、もう今回みたいに派手ないざこざは起こさないよ、だからもう言わないの」
「・・・」
御神主任が穏やかな口調で、章にそう諭した。
殴られて一番痛かったのは御神主任であるはずなのに、彼女は文句を言わず年上として、泣くより先に後輩を教えたのだ。
「・・・わかりました、もう言いません」
「そそ、それにこういうことは互いに水に流すに限るしさ」
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