二十五年もの

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 無意識に瞼が開いた。いつもなら夢と現実の狭間をしばらくさまようところだが、今日はすっきりとした目覚めだ。携帯電話のディスプレイを確認すると、八時二十分と表示されている。二〇一〇年になっても起床時間は十一時をうろついていたが、今日は違っていた。  二階に位置するこの小さな和室は、天井までの高さが一八〇センチほどしかない。そのため、気を抜くと吊るされた照明に頭をぶつける羽目になる。秀一はゆっくりと立ち上がり、畳の床をきしませながら部屋を出た。  毎年正月になると、母方の祖父母が暮らすこの家に家族で顔を出す。今年は年またぎの豪雪でなかなか家を空けられず、三が日を過ぎてからの訪問となった。兄と姉は仕事の都合で、父と母はやはり積雪が心配だということで帰っていったため、秀一ひとりが泊まることとなったのである。
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