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作者データ
【蜘蛛の糸】
静かな場所を探し、そこで‡JUMPER‡は意識を集中する。
──ツヴァイ。
その名を呼べば、果たして。
『お呼びになりました?』
答えはあった。
安堵し、そして用件を短く伝える。
一度、この“本”を脱し、エルアークに戻りたい事を。
『あら。もう宜しいのですか? もう少しその世界を堪能されるのかと思ってましたけど……まぁ、何でもいいか。それでは、早速』
言葉を最後まで聞く前に、ぐるりと視界が回転する。
意識が急速に遠退き、世界が暗転し、まるで眠りの中に落ちるよう。
「────」
その間際。
曖昧となった世界の隅に、独り。
小さな影が、じっとこちらを見ているような、そんな──。
***
「おう、帰ったかね、‡JUMPER‡殿」
気がつけば、白い円筒状の大広間。
細い管のようなものを咥えた錫人形が一体。茫然として床に寝転がる‡JUMPER‡を見下ろしていた。
意識をはっきりさせようと、頭を軽く振りながら立ち上がる‡JUMPER‡に、人形──この“円環の広間”を管理する“准将”という名を持つ彼は、口の隙間からぼふ、と煙を吐きつつ、
「で、どうしたね。こっちに戻ってくるってことは、他の本に入りたくなったか?」
─End of Scene─
※漫遊記開始時の作者の状況を記載。
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