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近づきたくないけど、近づかないといけない。
男の人との距離は二十メートルを切っている。
薄暗く街灯の明かりの下に男の人とコロはいる。
えーーーーーやめてよ。
コロは男の人の顔をペロペロとなめ回しているがはっきりと分かった。
この顔をどうしてくれるんだってお金を請求されちゃう。
完全に頭の中では最悪なストーリーを展開している。
距離はどんどん縮まっていく。
「はぁー」
ため息が出てくる。
そして、私はとうとう男の人の前に立った。
「ごめんなさい。家(うち)のコロが……えっと犬が飛び掛かって。許して下さい」
私は直ぐさまに男の人の顔を見る事なく、目を閉じて頭を下げて、精一杯の気持ちを込めて謝った。
許してもらえるよね。こんなか弱い女子高生が謝っているんやけん。
あっ誰がか弱いとか突っ込むのは無しでお願いします。
って何を言ってんだ私は。
とにかく、こんなに精一杯にか弱い女子高生が謝っているんやけん、これで許してくれんかったら、ただの非道な人にしか思えない。
「………許さん」
どすの効いた低い声で男の人は言った。
えっ嘘でしょ……。
まさかの返答に私の中に恐怖が芽生えてきた。
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