Chapter 3 -Intrusion-

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 俺とミロスが醜態を晒してから数分、二人で注意すべき野生生物とかの説明を聞いていた。  どうやら標的以外にも、大形の熊やら肉食性の怪鳥やらが、凶暴な動物が結構居るらしい。  俺も噂は聞いた事がある。  そんな危険な場所で生き生きと過ごしてるなんて、逞しいな。果てしなく。  この地域は環境も良いし、ヒトも動物も伸び伸びと成長するんだろう。 「――とまあ、危険生物はこのぐらいですね」  簡潔で、それでいて分かり易い説明が終わった。 「分かりました。それ以外の動物には危害を加えない、それで良いですね?」 「はい。身勝手ながら、その方向でお願いします」  深々と頭を下げる。 「命を奪わないで済むのならば、それが望ましいですしね。……まあ、所詮偽善ですが」  苦笑するイルクさん。  確かに偽善かもしれないけど、俺としてもそっちの方が好ましい。  何かを殺すってのは、あんまり良い気分じゃないからな。 「まっ、他の奴等でも、襲って来たら遠慮なく返り討ちに――ぶほっ!」 「……そろそろ行きましょうか。案内、お願い致します」  本日二回目の肘鉄をミロスに入れて切り出した。  イルクさんは「分かりました」とだけ言って、ソファから立ち上がる。  さて……鈍った勘は大丈夫か、実戦で実践しようか。 ――と、不意に頬を風が撫でた。  その場に居る全員が、風の出所へと眼を向ける。  そこには、女の子が居た。  スカートを引き摺りそうになりながら、とてとてと無言で歩いて来る。  何て言うか、見た目には可愛らしいんだけど、その全てをぶち壊しにしている点があった。  仏頂面。  もう、仏頂面。  何かを睨んでるんじゃないかと思えるぐらいに、半眼。  そして、頑なに閉じたへの字の口。 「クリス……。待ってなさいって、言った筈だろう?」  と、沈黙を破ったのはイルクさん。  突如乱入した女の子の側に近寄りしゃがむと、視線を合わせ、困った様な口調で叱る。 「えっと……イルクさん。この子は一体?」  俺も立ち上がって、近寄ってみる。  クリスと呼ばれた女の子は、それに気付いてこっちを見る。 ――う、ホントに目付き悪いな、この子。 「あ……済みません、紹介が遅れましたね」  立ち上がって、女の子の頭に手を置いて、 「この子は、クリスティーナ・ジュノン。私の妹です」  そう、言った。
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