Chapter 3 -Intrusion-

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「イルクさんの、妹さん?」  二人の顔を見比べる。  確かに何処となく似てはいるけど……やっばり、仏頂面の所為でそうは見えない。 「ええ、少し無愛想ですけどね。……ほら、クリス、お客さんに挨拶は?」  イルクさんは苦笑しつつ、女の子――クリスちゃんの背中を押す。 「…………」 「…………」  いや、だから。 「………………」 「………………」  頼むから、無言で凝視するのは止めてくれ。気まず過ぎる。  何かミロスがニヤニヤしてるし。  アイツ、後で覚えてろよ。 「えーと……。こ、こんにちは、クリスちゃん……」  出来るだけ身を屈めて、顔と顔が近付く様にする。  子供には、見下ろしたりして威圧を与えちゃ駄目って聞いた事があるし。 「…………」 「…………」  だが、その策も水泡に帰した。  例え威圧とか与えてもこのまんまなんじゃねぇかと思うぐらいに、無言。  くっ、気まずいにも程がある。何でこんなにも無口なんだ。 「…………」  とてとてと小走りに、クリスちゃんはイルクさんの後ろに隠れてしまった。  何なんだ、一体。 「ク、クリス! ちゃんと挨拶しなさい!」  おお、イルクさんが慌ててる。  珍しい物が見れたな。知り合ったばかりだけど。 「も、申し訳ありません……妹が失礼な事を……」  眉尻を下げて、大慌てで謝罪するイルクさん。  これまた、珍しい物が見れたな。 「いえ、別に構いませんよ。きっと、見慣れない人ばかりで緊張してるんでしょう」  相手は子供だし、俺は礼儀にうるさい訳じゃないし、生意気言われるより数段マシだし、笑って言い返す。 「そう、ですか? それなら良いんですが……」  何か、心底心配してるなぁ。  イルクさんって、もしかしたら想定外の事に弱いのかもしれない。 「それにしても……一体どうしたんだ。何か、困った事でも起きたのか?」  優しく、それでいてしっかりと、イルクさんは問い掛ける。  しかし、さっきから全然喋らないな、この子。  もしかして、口が利けないとか、そういった病気の類いなんだろうか。  そうだとしたら、気楽に話しかけるなんて浅はかだったけど……現に今、イルクさんが話し掛けてるしな。  だとしたら、何が―― 「イルク兄ぃ、おそい」  喋れるじゃねぇか。  うむ、単に人見知りなだけか。色々思案して馬鹿みたいだったな、あははははは…………はぁ、疲れた。
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