Chapter 3 -Intrusion-

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「おーい、ノーク。ぼーっとしやがって、どうした?」  聞き慣れた声が、頭に響く。  此所は――そうだ、確かイルクさんの……じゃなくて、スクリーチの村長宅、だな。 ――嫌な感じだ。  朝も、あの事を夢に見た。  今のも、白昼夢って奴じゃないのか。  折角、忘れようとしてたのに――どうして、思い出してしまうんだろう。  忘れるな、という事なんだろうか。  だとしたら、俺は何をしたらいいんだ?  俺に、何をしろって言うんだよ――! 「おい、ノーク! 聞いてんのか?」 「…………あ、ああ……悪い」  そうだ。  今は、そんな事を考える必要なんて無い。  俺は、生きている。  過去の幻影に縛られては、いけない。 「ったく。何か変だぞ、お前」 「お前にだけは言われたくねーよ」 「…………」  親友と一緒に、毎日を普通に過ごす。  それで、いいじゃないか。 「まあ……いいや。ほれ、おチビちゃんの説得も終わったみてぇだしよ、さっさと行くとしようや」 「ん、説得出来たのか。凄いな……」  イルクさんが支度をしているのを見る限り、どうやら本当に説得出来たみたいだ。  さすがイルクさん、そこにシビれる! 憧れるゥ!  コホン。  それにしても、クリスちゃんって意外とお兄ちゃんっ子なのか。  あんなに強情張るとは……人は見た目に依らないな。  まあ、付近にその代名詞的な奴が居るし、別段驚く事でもないか。 「……さて、お待たせしました。行きましょうか」  紺色のローブを羽織り、革靴を履いたイルクさんが言う。  クリスちゃんは、相変わらず不機嫌そうな顔で、その傍に立っている。 「では、改めて宜しくお願いします」 「ま、一つ宜しく頼むぜ」 「ええ、こちらこそ」  お互いに会釈して、今度こそ出発。 ――思ってみれば、かなり長い事話し込んでたな。 「それじゃクリス。行って来るから、良い子にしてなさいよ?」 「ん」  まあ、後は現地に向かうだけだ。  何も問題は――
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