Chapter 4 -Progress-

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「………………」  『貴方はノーマンですか』か。  流石に、そこまで直球だとは思わなかったな。  イルクさんは良い人だ。  だけど、これだけは言えない。 ――否、言ってはいけない。 「……違いますよ。俺は――」 「あぁ、良く勘違いされんだよな」 「――え?」  言葉の途中で、ミロスが口を挟む。 「勘違い、と言いますと?」 「読んで字の如く勘違いだよ。コイツ、何をトチ狂ったか知らねぇけどよ、髪を真っ青に染めてんだわ。な?」 「ミロス……?」  さも当然の様に、ミロスは言う。 「髪を、ですか……」 「おうよ。ケバいったらありゃしねぇだろ? ……つーか、耳見てみろよ、耳。別に尖んがっちゃいねぇだろ? 歴としたヒュイドだよ、ノークは」 「ふむ、確かに、そうですね……」  俺の耳を見て、イルクさんは呟く。  その反応を見て、ミロスは俺にウィンクをする。 ――忘れてた。  コイツは、人の心を読むのが上手いんだった。  俺が幾ら騙そうとしても、ミロスは全てお見通しって訳か。 ――つくづく凄い奴だよ、お前は。 「……それにしてもよ、何で『ノーマンか』なんて聞いたんだ? 事と次第によっちぞ?」  若干の不信感を燈した瞳で、イルクさんを見据える。  ミロスは、こういう人間だ。  自分はそっちのけで、他人の事だけを気に掛ける。  特に、俺絡みの事だと。  その気遣いは嬉しいんだが、たまには自分の事も気にして欲しいのが本音だ。 「いえ、深い意味はありませんよ。少し、気になっただけです」  ミロスの問い掛けに、イルクさんは微笑み答える。 「それに、私は人種に特別拘りがある訳ではありませんよ。どちらも同じ《人間》ですしね」  それを聞いて、少し安心した。  イルクさんの様な人が増えれば、俺は堂々と大手を振って歩けるのだろうか。 「……そうか。なら、良いんだけどな」  頭をポリポリと掻き、その腕をズボンのポケットに突っ込む。  釈然としていない顔だが、何も言わないのを見ると、一応は信じたらしい。 「私も、些か軽薄でしたね。申し訳ありません」  歩を止め、俺とミロスに頭を下げる。 「俺は気にしてませんから、イルクさんも気にしないで下さい」  苦笑交じりに答える。  ミロスは、「ああ」と一言返しただけで、そのままスタスタと行ってしまった。 ――変な所で、精神的に子供だなぁ。
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