プロローグ 何となくの人生

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時間はいつの間にか過ぎていた。 気づいた時は成人まで残り一年だった。 この十九年間で何があっただろう…幼稚園行って…小学行って…中学行って…高校…どれもが薄い思い出のようにさっと脳裏を過る。 最近あった出来事と言えば…俺が受けた大学の合格者番号欄に、俺の受験番号が無かっただけだ…そう、ただそれだけの話。 家に居づらくなったから…家を出て、コンビニのアルバイトをしながら、自分がもしかしたら通っていたかもしれない大学を見上げている。 俺の住んでいる月に三万のボロアパートは、バイト先と、先生に進学先を書けと脅されて書いただけの興味のない大学の間にある。 気のはやった父が先にこのアパートを借りてしまったからだ。 そう思ったら…自分で決めたことなど…一握りしか無いのかも知れない。 大学の前は、嵐の前の静けさというか、入学式前の最後の春休みの静けさを残していた。 そんなこれから始まる入学式に…俺の姿は無い。 何か未練でもあるのかと考えても、何一つ未練や後悔はない。 あるのはこうなったという事実だけ。 だからこそ何か未練じみたものを感じたくて俺はこの大学を見上げているのかも知れない。 そんなかっこつけたワンシーンを、場違いな春の優しい風が駆け抜けた。
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