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手続き自体は簡単なものだった。
提出の書類を出しただけである。
先程少し伺ったのだが、ここの学長は祖父の友人で、学部長は祖父の教え子だそうだ。
どうにもコネがありすぎる。
まぁコネというものはあるなら使うに越したことはない。
別に卑怯とは思わない、それも財産の一つである。
所有物やお金と同じで、ある奴は恵まれている。
無い奴は恵まれていない。
ただそれだけである。
なので休学ぐらいちょちょっとできそうである。
そして事務から帰ってきた菖蒲を確認し、椅子から立ち上がる。
「終わったのか?」
静かに頷く。
後悔の色は伺えない。
寧ろどこかすっきりとしている。
「そっか…んじゃま、確かに見届けましたよっと」
そう言いながら携帯のカメラで菖蒲を撮る。
菖蒲はそれに何の抵抗も見せなかった。
「証拠写真?」
「ま、そんなとこだな…」
携帯に保存を確認しつつ返答する。
「忘れちゃダメよ、私も忘れないから…」
そう言い残し、しっかりとした足取りで事務棟をでる。
「おう」
旧式の携帯をたたんで、無造作にポケットに突っ込むと、菖蒲の後に続く。
普段の小さな背中が、大きく見えてしまうのはどういう理由か。
本当に知らないわけではない。
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