1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぁ~あ」
人が来ることの少ない深夜のコンビニで店長が欠伸をした。
特にやることが無いのだろう。
先程から奥から出てきたり奥に入ったりを繰り返している。
そして俺はそんな店長を横にぼんやりとレジの隣の募金箱に目をやる。
(ハイチの地震か…)
俺は先日あった地震のことを思い出し、被災地の悲惨な状況を思い浮かべた。
そしておもむろにポケットに手を突っ込み、夜食代として入れていた五百円玉を募金箱に入れた。
(今日は夜食抜きだな)
「五百円…」
突如声がしたのですばやく顔をあげた。
そこには俺より数日早くここのコンビニのバイトを始めた宮本菖蒲(みやもと あやめ)がいた。
「何すか?宮本先輩」
年は同じであるが、バイト上の関係では先輩にあたる。
皮肉をたっぷりこめて先輩を強調する。
「募金した本人は被災地の人を助けたつもりでしょうけど…それがどれほどの助けとなったのか把握しているのかしら…」
相変わらずの無表情で淡々と喋る。
彼女は無関心主義者なのだ。
自分の興味の無いことには無関心を貫き通す。
下手に愛想笑いなどしないところからわかりやすい性格ではあるのだが、もう少し笑えば可愛げがあるというものだ。
「それはわかりませんが…何もしないよりはましじゃないですか?」
「そう心から思える人はいいんだけど…それと小崎君。その言葉遣いは辞めてと言わなかった?」
「…一応先輩ですから、バイト上は」
俺はそっぽを向きながら適当に誤魔化す。
ちなみに紹介が遅れたが俺の名前は小崎隆平(おざき りゅうへい)だ。
したがって彼女の言う小崎君は俺をさす…当たり前だけど…。
.
最初のコメントを投稿しよう!