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鋼と空の二人もまた、そんな人間たちの一人だった。
彼らは他人から依頼を受け、依頼主の代わりに遺跡に潜り、遺産を運び出す事を生業としている。
遺産とはつまり、機械文明が栄えた頃の品物の総称だが、それらの品にはほとんど頓着せず、遺跡を攻略する過程を楽しみ、かつ報酬としてお金を受け取るといった一石二鳥のシステムだ。
そして現在――
二人は新たに依頼された遺産を持ち出すため、こうして遺跡に潜っている最中なのだった。
「はあ……はあ……さ、さすがにあの数は、きつい、な。随分と体力、使っちまった」
肩で荒く息をしながら、鋼が辟易と愚痴をこぼす。
機械遺跡によく見られる鋼鉄の通路。
そこに、さんざん追い掛け回してくれた遺跡の防衛機構の一つである機械兵器が、完膚なきまでに破壊されて累々と転がっていた。
それも、尋常な壊され方ではない。
鋼の前方へとほぼ一直線。
まるでミサイルでもぶち込まれたかのように、それらの機械兵器群はまとめて破壊されていた。
「ああ、疲れた。誰かが手伝ってくれればもっと楽だったのにな」
鋼はわざとらしい口調でつぶやき、半眼で隣に座り込む空を睨んだ。
しかし空はそれを気にした様子も無くおもむろに立ち上がると、埃を払い、背中のバックから一枚のくたびれた紙を取り出した。
横に長い円筒のような形の中に、縦横何本もの線がのたくっている。
今回、依頼主に手渡された、この遺跡の内部見取り図だ。
「ええと……随分と走ったけど、今どの辺りなんだろう? 中心部から離れてなければいいんだけど」
「無視かよおい」
「実益のない会話なんかしたくないだけだよ。それより、さっさと遺産を確保するんじゃなかったの? 今回はあまり準備に時間かけてられなかったんだから、長期戦は無理だからね?」
地図に落とした目線を上げもせず、咎めるような口調で空。
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