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「着いた……兄さん、着いたよ!」
しばらくそうして歩いていると、前を行く空がいきなり歓声を上げた。
その後ろ姿を追い抜いて前に出れば、確かにこれまでの光景とは一変し、様々な機械類が敷き詰められた空間が姿を見せている。
「なんだ、もう着いちまったのかよ。妨害らしい妨害は最初の機械兵器だけだったし、未開の遺跡にしては随分と楽だったな」
「当たり前だよ。何の為に管制・制御室を先に抑えたと思ってるのさ。トラップを沈黙させた後だったんだから、さっきみたいに兄さんが余計な事しなければ何も起きないんだよ、本当は」
引っ掛かる物言いだが、まあこの際だ、気にしないでおいてやろうと胸中で独りごちる。
未知の可能性を前に、鋼は口元を吊り上げて嬉しそうに破顔した。
こうした瞬間はやはり堪らない。
ずっとずっと昔に沈黙し、それ以来何者も拒み続けて来た『機械』という巨大な建造物の腹の中で、自分はその名残と相対しているのだ。
興奮するなと言われて大人しくなれるほど、鋼と空の二人は機械の魅力に敵ってはいなかった。
鋼は巨大なディスプレイの前に立ち、コンピュータの全貌を視界に収める。
ほんのりと発光するディスプレイには、この遺跡のシステムや動作の状況が小さな文字となり明滅を繰り返していた。
うん、と鋼は満足そうに頷く。
どうやらコンピュータは生きているようだ。
空もまた、同じように満足そうな笑顔を作った。
「さて、と。それじゃ始めますか。兄さん、目的の遺産はこの部屋にあるはずだから、メインコンピュータにハッキングしてみてくれない? 僕はシステムを落として、二重に防衛機構の沈静化を行なうからさ」
「おう、任せとけ」
威勢良く答えると、鋼はメインモニターの前にあるコンソールに張り付いて、素早く指を走らせた。
隣では同じように空が作業を開始している。
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