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それを尻目に次々とファイルを捲り、遺跡に関する情報を子細漏れず暴いて行く。
かなりの年月を過ごしたにも関わらず、こうして正常に動作するのにはさすがに驚いた。
いくら機械とはいえ、時の流れに蝕まれて使い物にならないのがほとんどなのだ。
それに比べて考えてみれば、この遺跡は少しばかり異常だと言える。
いや、遺跡が異常というのではなく、これはもしかしたら――
――俺達の前に誰かが潜って、動力を復帰させたって事も在り得る、か?
あまり考えたくは無い可能性だ。
もしそうだとすれば、すでに目当ての物も持ち出されている公算が非常に強い。
だが――。
早くも作業が単純化し始めた鋼の指がピタリと止まる。
考え込んでいた難しげな顔が一変、ニヤリと表情が笑みに移り変わり、
「考え過ぎ……だったか? 在ったぜ、空!」
タン、とキーを押し込むと、コンピュータの一角がスライドし、その奥に、凝った造りや趣向に飛んだ仕組みを好む機械文明にしては無造作に小さな空洞が姿を覗かせ、目当ての遺産がひっそりと安置されていた。
それは、直径五センチにも満たないような、小さな小さな琥珀色の球体だった。
半透明のその球体の中央では、幾重にも交差した大小のリングが輝いて見える。
「なんか物足りないが、ま、仕事だしな。……しかし、なんだろな、これ」
およそ機械とは形容し難いそれをおもむろに手に取ると、鋼は頭上にかざしてじっくりと観察した。
光を透かして輝くそれは、一見して何に使った物なのか全く判別がつかない。
首を傾げ、まあいいかと呟き、鋼は手の平に収まるその球体を胸のポケットにしまおうとして――
「……え? ちょ、何これ、止まれ、止まれってこのぉっ!」
緊迫した声が鋼の耳朶を叩く。
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