一章 大佐と少佐

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質量を誇る刃物で、まるで叩きつけるようにして加えられた斬撃。 明らかな、それは戦闘の余韻だ。 ――やっぱり、誰かいやがるのか? 訝しむ鋼の思考に割り込んで、機械兵器が唐突に詰め寄ってきた。 一瞬にして間合いを踏み抜くその速さに冷たい汗が背筋を流れる。 鋼は咄嗟に空を突き飛ばすと、自分はその反対へと全力で転がり込んだ。 「だああ、とりあえず考え事は後回しかよ!」 罵声と共に体を起こすと、ホルスターから愛用の拳銃を引き抜く。 続けざまに二発。 右前足の関節部を狙って、鋼は引き金を引いた。 獰猛な唸り声を上げ、弾丸は正確に突き進むと、機械兵器の歩脚部へと潜り込む――はずだった。 「…………はい?」 思わず間抜けな声が漏れる。 高速で飛来する銃弾を避けるように、いきなり機械兵器の巨体が上空へと舞い上がったのだ。 頑強な四本足を使っての、予備動作なしの跳躍。 さらに歩脚の位置が一瞬にして上下逆に入れ替わり、鋭利な先端を天井に突き刺して体を固定する。 呆然と上を見上げる二人の視界には、天井に張り付く機械兵器が見えた。 その姿はさながら、蜘蛛の巣にぶら下がる蜘蛛そのものだった。 「あんだけの巨体で、銃弾を避けやがるだ? 冗談はよしてくれ」 疲れたように首を振る鋼を目掛け、機械兵器が反撃するように歩脚の一つを勢い良く振り回してきた。 まるで空気を破壊するような音を引き連れて、人間の頭蓋など一撃で粉砕するほどの衝撃が問答無用で迫る。 もちろん――全力で逃げた。 「ぬおおっ! だから、なんで無駄に速ぇんだよ、このデカブツはぁ!」 二転、三転。 考え無しに飛び退いた体がゴツゴツした機械の地面を転がり、すでに傍観を決め込んでいた空の側に滑り込んだ。
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