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「うわ、ちょ、こっちこないでよ兄さん! 僕まで危ないじゃないか!」
「テメ、空、一人だけなに安全なところで見てやがんだ! お前も戦(や)れ!」
「いや、でもほら、僕って案外頭脳派っていうかさ、ここは兄さんがもうひと踏ん張りすれば万事収まると思うんだけど、どうだろう?」
「アホぬかせ、これ以上張り切ったら体力が底ついちまうよ! 次はお前だ、さっさと戦(や)れ!」
「ええ~、僕だって疲れるからやだ……て、うわ、話なんかしてる場合じゃ――」
空の言葉を遮り、頭上から鉛色の巨体が落下してきた。
質量を感じさせる衝撃を撒き散らし、二人の間に割り込むように着地する。
機械兵器の真紅の単眼が、空を捉えた。
「て、え、僕? 何で?」
予想外の展開に、一瞬、判断が鈍る。
唖然とする空の目の前で、機械兵器の顎関節(かどうかは正直怪しい)がガバリと下がり、その中から銃身のような物が現れた。
刹那――。
白い閃光が迸る。
銃身の先から、一直線に絞り込まれた光が空の顔面を狙う。
それに慌てて体を逃がすと、獲物を捕え損ねた光は背後の壁にぶち当たり、鋼鉄に小さな風穴を穿った。
「うそ、レーザーガン? そんな物まで……っ!」
驚く空の台詞を無視して、機械兵器は奇妙な駆動音を響かせると、
「な……っ!」
体中から同じような銃口が無数に突き出した。
辺り一面に光が踊る。
声にならない悲鳴を上げて、二人は全力で逃げ惑った。
二
「本当に、この遺跡に二人の盗掘屋が潜ったのか?」
夜の闇が世界に忍び寄る頃――薄暗くなり始めた空の下で、シン=シルバは疑わしそうな声を出した。
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