一章 大佐と少佐

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金髪碧眼の、鼻梁のすっきりとした青年だ。 切れ長の双眸はまるで猛禽類のように鋭く、短く立てた金髪と相まって獣のような威圧感を覚える。 ようやく二十歳を過ぎた頃だろうが、若々しさの裏に斬りつけるような雰囲気を隠し持っていた。 鍛えられた長身の体は黒の軍服に包まれており、その手には刀と呼ばれる反り身の刃を収めた鞘が握られている。 禁忌に触れる犯罪者、遺跡盗掘者を取り締まる軍の執行部隊。 広大な大陸の中で、アールデリアと呼ばれるこの地方を管轄する部隊の大佐というのが彼の肩書きだ。 「あら、大佐。私の能力を疑うんですか?」 そんな彼に、隣に立つ人物が心外そうに声を返す。 シンと同様の軍服に身を包んだ、二十歳半ばの女性だ。 セミロングの黒髪を指先でクルクルといじる様はどこか物憂げで、なんとなくやる気の欠けた雰囲気が伝わってくる。 彼女――サラサ=ウェインもまた執行部隊の隊員で、階級は少佐である。 身長は、百八十を超えるシンと比較して頭半分も違わないところを見ると、女性にしてはかなり長身の部類に入るだろう。 「別に、サラサを疑ってるわけじゃない。ただ、この遺跡は俺達も知らなかった未解遺跡だ。たとえ盗掘屋が潜っていたとしても、安易に後を追うのはまずい。かといってこのままでは後手に回るしかなくなる。だから、俺としてはあまり関わりたくない、というのが本音なんだよ」 「でも、放っておくわけにもいかないでしょう? それに、私の得た情報によると、この遺跡に潜った二人組みは右腕と左腕、それぞれが《機甲義体(オート・アームズ)》ですよ?」 「……あいつらか」 「十中八九、そうでしょうね。というか、この辺りで未開遺跡に平気で挑む人間なんて、彼らくらいしか思い当たりません」
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