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空は何となく、真紅に明滅する単眼(モノクル)と目が合ったような気がした。
「無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
ぶわっと涙を流し、絶叫する。
逃走速度が目に見えて加速した。
「あ! おいこら、なに追い抜いてんだ、戻って来い空!」
「嫌だ、絶対に嫌だ! 兄さんがなんとかしてよ!」
「アホか! 銃弾も効かねぇ奴をどうしろってんだよ!」
「《右腕》、使えばいいじゃん!だいたい兄さんが悪いんじゃないか! いくら可愛いからって、素性も分からない女の子の依頼を受けるなんて!」
返してくる空の言葉に、う、と鋼は喉を詰まらせた。
「そ、それとこれとは話が別だろ?」
「不用意に機械をいじって、あの馬鹿でかい掃討型の機械兵器を起動させたのも兄さんだよ!」
振り向きもせず、空が追い討ちを掛けてきた。
これには言い返すことも出来ず、鋼は後ろを振り向くと、迫る蜘蛛もどきを見据え――
「だあ、わぁったよ! 俺がなんとかすりゃいいんだろ、俺が!」
半ば自棄になって叫ぶと、その場に踏み止まり、迫る巨体へと向き直った。
眼前に迫る機械兵器。
引き攣る顔でその異様から繰り出される四肢の一撃をかわすと、スライディングの要領で股下を潜り背後へと回り込む。
そのまま一挙動で跳ね起き、腰のホルスターに吊ってあった六発装弾、回転式シリンダーの拳銃を引き抜く。
高速射撃(クイック・ドロウ)――。
立て続けに吠える銃口からマグナム弾が吐き出され、馬鹿でかいボディを支える歩脚の関節部へと綺麗に四発の弾丸が吸い込まれた。
途端、ガリガリと神経を刺激する嫌な音が漏れだし、ぎこちない動きで機械兵器の体が地面に向かって倒れ込んだ。
その隙を逃さず、鋼は素早く機械兵器の背中に飛び乗ると、パンツのポケットから小型の手榴弾を取り出し、
「これでも喰らってろ!」
右腕の《機甲義体(オート・アームズ)》を猛然と走らせると、信じられない事に機械兵器の装甲を強引にぶち破った。
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