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鋼鉄の体内に右腕を突き入れたまま、手榴弾のピンを片手の指で器用に外すと、そのまま機械兵器の体から右腕を引き抜き、転がる様にして距離を稼ぐ。
爆音は、遅れてやってきた。
体の中に残された手榴弾がすかさず爆発、限定された空間の中で衝撃は余す所なく周囲を破壊し、機械兵器の体を内側から木っ端微塵に吹き飛ばした。
爆発の余韻が通路の中を跳ね回り、残骸が弾丸のように飛んでくる。
「ぬおおおおおおおおっ!」
「ぎゃあああああああっ!」
まるで散弾銃をぶっ放したかのような惨状に、鋼と空は悲鳴を上げてのた打ち……もとい、逃げ回った。
「あ、危ないじゃないか! もっと考えて破壊してよ!」
「アホか、形振り構ってられっかよ! 文句言うんならお前がやりゃよかっただろ!」
埃の被った頭を振りながら、鋼が体を起こす。
「とにかく、これで機械兵器は片付いた。さっさと目的の物を見つけてかっぱらおうぜ」
これには空も異論が無く、そうだね、と頷いた。
二人して立ち上がり、たった今追われて来たばかりの通路へと向き直る。
――その顔が、泣き笑いのような表情で固まった。
「ねえ、兄さん。僕、夢を見てるのかな」
「さあな。俺も何となく夢を見てる気がしてきた。こいつら、一体だけじゃなかったんだな」
どこか遠い目で呟く鋼の口調に覇気は感じられない。
薄暗い通路の向こう。
そこに煌々と燃える、無数の単眼(モノクル)。
ギチギチと嫌な音を立てて、ついさっき鋼が破壊したのと同じタイプの機械兵器が不気味にひしめいていた。
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