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大都市の郊外にある、一際賑やかで煌びやかな街
ここは花街
一夜の夢を求めて男達が訪れる。
遊廓の中でも、特に賑わいをみせる店があった。
老舗の大店「六角屋」
その鮮やかな朱色の格子の内側では、色とりどりの着物に身を包んだ女が客引きをしている。
帰る客達には、相手を終えた遊女が
「また来てくださいね」
と、指きりをせがみ気休めの約束を取り交わす。
ゆびきりげんまん
うそついたら…
遠くにその歌を聞きながら、六角屋一、売れっ子の花魁は憂い顔で外を見下ろしていた。
「樹太夫、島田様がお見えです」
「はいはい…」
紺碧の着物に、シンプルな髪型
樹太夫は並みの遊女の扱いとは異なる。
客を取るのも、まずは顔合わせ。本当に会う事しかできない。
次は会食。勿論、掛かる費用は客持ち。この会食で太夫に気に入ってもらえなければ、次に進む事はない。
そして、3回目でいよいよ一夜を共にする交渉権を得る。
しかし、樹太夫の顧客は誰もが会食止まり。
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