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母親は、二度死んだ。いや死んだのは一度だったが、亡骸が動いた。家族は、常樹は、それに耐えられなかった。
「今でも、ね。手に感触が残っているわ」
母親は抵抗しなかった。なぜなら苦しいなど感じないのだから。
「私が殺したのは、間違いなく母。私は前科一犯、ということよ。しかも殺人」
常樹は長い腰辺りまである髪の毛を整えるように巻き上げ、単調に、しかしどこか切なげに、その緑の瞳で足下を見た。
「仕方ないさ」
この言葉がどれだけ軽く聞こえることだろう。しかし、聞こえとは別に、俺はそんな軽い意味はこめていないつもりだった。
「蘇らせれる、と感じたら、誰でも望むさ。例え不可能だとわかっていても、可能性にかけてみたくなるのさ。人間ならね」
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