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下心、という言葉を使った常樹の言葉には、どこか共感できるものがあった。それゆえに、だからこそ、常樹は俺と友達になりたがった。それは俺も少なからず同じであることは向こうからしても明白だったのかもしれないのであろうけれど。
「だから、人を好きになっちゃいけない。なんて悲しいこと言わないで」
いつもの無表情が一変して、なんだか悲しそうだ。
「お前……」
〈聞イテイタノカ?〉
「勘違いしないでよ?別に私を好きになれというわけではなく、この先のアナタの人生を正しただけなのだから」
「わかってるさ……」
それでも、安易にうなずけない。それは俺の宿命がそうさせてくれない。
「じゃあそろそろ時間だから。また明日、私に会えるのを楽しみにしてなさい」
「…………ん。じゃあな」
決め台詞を残して電車に乗り込んでいく常樹の背中は、なんだか慈愛に溢れているような、そんな気がした。
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