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わずかに時は遡る。
本日は12月24日。通称クリスマスイブというイベントの日。いろんな神を魔法瓶に詰め込んだかのような日本でもそれは当然行われる。幸せそうなカップル、妬ましそうなシングルが道に溢れていた。ここ『OUTLET PARK』も例外ではない。
「ありがとうございましたー。またお越し下さいませー」
アパレル系の店特有の語尾が高音に上ずるあいさつをし、風音はふかぶかと頭を下げながら最後の客の前の客を見送った。視線と床が重なると、糸くずが埃を巻き込み落ちていた。腰を屈め、ティッシュにくるみ、ゴミ箱にシュートした。外れた。もう一度同じ場所からシュートした。入った。風音はこだわる主義だ。
「何してんだっつの」
ブザービーターの余韻を味わうかのようにポーズを決めていた風音は、店長のチョップが後頭部に炸裂し視界が揺れた。
「ぬ?」
「ぬ? じゃないわよ。下らないことやってないで、さっさとシメはいっちゃって」
そう言うと店長は奥の関係者以外立ち入り禁止と書かれた従業員室に入って行った。ここは扉ではなく暖簾で仕切られている。
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