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「んー、どうした一(にのまえ)ー。」
暖簾を掻き分け店長が口を拭いながら現れた。新雪のように真っ白な肌、かすかに鎖骨に触れる程度の茶色の髪。白のシャツの胸元を開け、小さな十字架のネックレスがいまにも溺れそうだ。細めの黒のパンツ姿がスタイルの良さを浮き彫りにしている。目鼻立ちが整っているその口元にかすかに見えたクリームを見逃さなかった。さては自分だけ先にお土産の青山シュークリーム食べてたな。チクショー。
「こちらのお客様なんですが……」
「どうしました。おきゃ……くしゃま」
店長はソレを視認すると目が点になり、動揺が言葉にまであらわれてしまった。どうしてクマの着ぐるみなの、と店長の思考がクマ一色となる。
「店長か。これを売ってくれ」
「申し訳ありません。それは」
「どうしても要るのだ」
「イベント用のものなので、売れと申されても」
「どうしてもダメか」
「そう仰られましても」
「どうしてもか」
「ですから」
「たのむ」
「……お譲りします」
あ、折れた。
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