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「ホントにあれ売っちゃって良かったんですか? 知りませんよ、俺」  風音は先ほどブーツインした右足で左足のヒラメ筋あたりを擦りながら、レジ回りのシメを始めた。 「そんなこと言ったってしょうがないじゃない。何でクマの着ぐるみなのよ。そんでもって、何で星が必要なのよ。熊なんて笹でも食ってればいいじゃない」 「……店長。笹食うのはパンダですよパンダ。大熊猫(おおくまねこ)と書いてパンダですよ。熊が食うのは鮭です。でも、さっきのクマが食うのは蜂蜜ですね。きっと」 「あーもう、トラウマになったらどうしてくれんのよ」  店長は気だるそうに両手を天井に向け背骨を伸ばすように伸びをした。すまん、ネックレス、お前を助けてやりたいが理性が許さん。 「でも、もしかしたらさっきのクマの着ぐるみはサンタ・クロースなのかもしれませんね」 「サンタ?」 「ええ、世界の誰かが星が欲しいと願ったんですが、本物をやるわけにはいかず、たまたま見つけたあれをプレゼントにしようと。で、姿を人前に晒すわけにもいかず、しかたなくクマの着ぐるみを拝借した……ってのはどうです?」 「ふーん、一(にのまえ)君。結構、ロマンチストなんだ」
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