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「あの…夜野木君…。」
真宵は声をかけられた事に驚きつつ眼鏡を直しながら口を開いた。
「…何?」
「そのさ、夜野木君も…見たよね…?」
心底嫌そうな顔をすると肯定の意味で首を振る。
「…認めたくないけど…。」
やっぱり真宵も見たのだ、あの少年を。
夢じゃなく。
「夜野木君は…行く?屋上…。」
「…何で僕が…?」
「うっ、まあそうなんだけど…。」
「…僕はあんな変なモノに関わりたくない。」
「そうなんだけど…でも…、夜野木君も気になるよね…?アレ…。」
「………。」
確かに気になる、心底気になる。
あの耳の生えた半分兎みたいな少年。
「………………。」
「…?夜野木君…?」
机から立ち上がる真宵。
それを見てやはり行かないのかと少し落胆して見送ろうとすると促された。
「…行くんだろ?屋上…。」
「う、うんっ!」
慌て彼の後を追う。
二人並んで廊下を歩くと周りから視線が飛んでくるのが分かる。
真宵が誰かといる所なんてめったに見ないからだ。
居心地がなんとなく悪くて眼鏡を伏せてみる。
そしてなるべく早足で屋上に向かう二人。
隣のクラスを通る時にチラリ、と目で覗いてみたが壱伽の姿は何処にもなかった。
(やっぱ、来ない…よね?)
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