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『ここが千留亜さんの家ですか~。』
「う…うん…。」
それ程立派ではないが5階だての小綺麗なマンションに住んでいる千留亜。
そして隣にはハクト。
そう、千留亜は押しに負けたのだ。
(まっ…負けた…。)
ガックリと肩を落とす。
玄関に向かう足取りが重い。 しかたなしに鍵を開けて、中に招き入れた。
と、タイミングよく千留亜の兄である彼方が出迎えてくれた。
「お帰りっ、ちるっ~!」
「ただい…はっ!?」
普通に返そうとしたが隣でふよふよと浮いているハクトを思い出しオフェンスの様に手で隠しながらわたわたする。
「どうしたんだ、ちる?」
「いやぁっ…?!!べべべ別に何でもないよっ…!!」
冷や汗をかき明らかに挙動不審な千留亜に??の目線をやる。
『あ、千留亜さん大丈夫ですよ~!僕の姿はアリス以外に見えないので~。』
「…………!!」
(早く言ってよ……!!)
はあああと深いため息をつきうなだれる。
「ちる?どうしたんだ?体調でも悪いのか?」
「う、……ううんっ?!平気。」
「そか?ならいいんだけど、飯食べるだろ?もう少しで出来るから。」
「あ、うん。じゃあ着替えてくるね。」
そう言いながら部屋に戻る。
兄の隣をハクトはふよふよと通りすぎるはまったく気付いていない。
それはそれで変な気分だが。
部屋の中に入るとピンク色で統一した可愛らしい部屋が広がる。
鞄を放り投げて大きいベッドに飛び込む。
「はぁぁぁぁ…。」
(なんだか疲れた…。)
今日は本当に1日疲れてしまった。
二人の王子に関わったり変テコな兎にファンタジーまっしぐらな話。
色々ありすぎてしまった。
チラリと、自分の横にちょこんと可愛らしく座るハクトに目をやると視線がぶつかった。
『千留亜さんっ!今日からお世話になりますっ。』
「……。」
丁寧に深々と頭をさげる。
「あー…、うんよろしくね…。」
何だか考える事が面倒くさくなり、思考をシャットダウンして目を閉じた。
始まりの国のアリス 終
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