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* * *
翌日。
嘘でも良い寝起きとは言えない疲労感と共に、俺は目を覚ました。
起きて目に入ったのは、風太達が書いた俺の似顔絵が貼ってある木の壁。
貰い物のベッドも緑の布団も机に投げ出された図書館の本も、何も変わらない俺の部屋だった。
窓から入り込む日差しで、いつものように、目が覚めた俺はベッドから出て窓を開ける。
……夢じゃ、ないのか。
窓から見える景色だけは、いつも通りじゃなかった。
昨日あった全てが夢であってほしいという俺の願望は、黒く焼け焦げた孤児院の門によって打ち消される。
溜息ついて窓を閉め、机の上に飾ってある写真を手に取った。
その中には、昔の俺と、渚と、もう一人──リトが居た。
(俺……ずっとこの孤児院に居るんだろうって、思ってたのにな)
笑顔で写っている三人を見ると、昨日のシャオの言葉が甦ってきた。
部屋の外からは、いつも通りの子供達を起こす渚の元気な声が響いている。また皆ぐずってんだろーな……。
「……ん」
そうだ……ウォンテッドだとか、俺には関係無い。
『しーちゃーん! 朝ごはーん!』
渚が部屋の外から呼んでいる。
『シグ兄ぃごはぁん……』
『なくなっちゃうよーぅ……』
眠たそうな皆の声がする。
これが俺の日常。俺の大好きな、何物にも代えがたいものだ。
(やっぱり……断ろう)
写真を元の場所に戻す。そして俺はいつも通りに頭を掻きながら答えた。
「分かった、今行くよ」
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