─決意─

2/18
83025人が本棚に入れています
本棚に追加
/505ページ
     * * *  翌日。  嘘でも良い寝起きとは言えない疲労感と共に、俺は目を覚ました。  起きて目に入ったのは、風太達が書いた俺の似顔絵が貼ってある木の壁。  貰い物のベッドも緑の布団も机に投げ出された図書館の本も、何も変わらない俺の部屋だった。  窓から入り込む日差しで、いつものように、目が覚めた俺はベッドから出て窓を開ける。  ……夢じゃ、ないのか。  窓から見える景色だけは、いつも通りじゃなかった。  昨日あった全てが夢であってほしいという俺の願望は、黒く焼け焦げた孤児院の門によって打ち消される。  溜息ついて窓を閉め、机の上に飾ってある写真を手に取った。  その中には、昔の俺と、渚と、もう一人──リトが居た。 (俺……ずっとこの孤児院に居るんだろうって、思ってたのにな)  笑顔で写っている三人を見ると、昨日のシャオの言葉が甦ってきた。  部屋の外からは、いつも通りの子供達を起こす渚の元気な声が響いている。また皆ぐずってんだろーな……。 「……ん」  そうだ……ウォンテッドだとか、俺には関係無い。 『しーちゃーん! 朝ごはーん!』  渚が部屋の外から呼んでいる。 『シグ兄ぃごはぁん……』 『なくなっちゃうよーぅ……』  眠たそうな皆の声がする。  これが俺の日常。俺の大好きな、何物にも代えがたいものだ。 (やっぱり……断ろう)  写真を元の場所に戻す。そして俺はいつも通りに頭を掻きながら答えた。 「分かった、今行くよ」
/505ページ

最初のコメントを投稿しよう!