第一話

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そして、家に帰る日、祖母はこういった。 「兄はここにおいといた方が暮らしやすいだろう。あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日にもたん・・・・」 僕は、その言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。 あの白い物体が何なのか、そんなことはどうでもよくなった。 ただ兄がもう二度と戻ってこない事がわかったからだ。 また来年実家に言った時会ったとしても、それはもう兄ではない。 何でこんな事になったんだろう・・ついこの前まで仲良く遊んだのに、何で・・・? 僕は、必死に涙を拭い、車に乗って実家を離れた。 祖父たちが手を振っている中、変わり果てた兄が、 一瞬、手を振ったように見えた。 僕は、遠ざかっていく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡を覗いたら、 兄は、確かに泣いていた。 表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せた事のない、最初で最後の悲しい笑顔だった。 そして、すぐ曲がり角を曲がった時にもう兄の姿は見えなくなっていたが、僕は、涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。
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