2102人が本棚に入れています
本棚に追加
ユウヤの乗る電車の案内アナウンスが聞こえてきた。
「ちゅーしていい?」
顔を寄せながら、タケルが言った。
「は?」
「じゃ抱きしめていい?」
「……」
「じゃあ…手繋いでもいいですか?」
タケルの意図がわからず、ユウヤは首を傾げた。
「オマエなに言ってんの?」
「あ、もしかして、ユウヤってツンデレ?」
「……ツンでもデレでもねぇよ。普通!」
思わず声を荒げた。
乗降客が不思議そうに、二人を横目で見ながら通り過ぎる。
慌ててひとつ咳払いをすると、ユウヤは改札口を通り抜けた。
「じゃあな!」
ユウヤが手を振ると、タケルも手を上げた。
見届けてから、ゆっくり歩き出した。
「ちゃんと帰って来いよ!」
タケルの声にもう一度振り向くと、唇の端を持ち上げてシニカルな笑みを作っていたタケルの目が、なんだか淋しげに見えた。
最初のコメントを投稿しよう!