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青年は、そんな父親のために、仏教…しいては宗教そのものに対し、疑問を抱いていた。
それは、日々の暮らしの中で強く意識する機会は少なかったが、確実に青年の胸の中に鬱積し続けていた。
ちょうど良い。この際だから好き勝手書かせてもらおう。
青年はきびすを返し、女性に歩み寄った。
「ありがとうございます。こちらにお答えください」
現金に中年の女性は笑い、用紙をはさんだバインダーとボールペンを差し出してきた。
『貴方は、神様についてどう思いますか』
さあ、どう書いてやろうか。そう思いながら青年は差し出された物を手に取った。
『存在しないもの。どんな罪を犯しても、裁くのは人であって神ではない』
さあ、どうだ。
青年は、挑戦的に女性を睨みつけながら、アンケートを返した。
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