重たい扉

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「お湯の温度はどの位がお好みでしょうか?‥‥お風呂にお湯をためてきますね…すぐに戻りますので少々お待ち下さい。」 客に話しかけながら部屋を出てバスルームへ向かう。 (あ~ぁ。帰りたいなぁ…‥。) 熱湯のシャワーで浴槽を綺麗に流し、栓をしてお湯をため始める。 ためながらスポンジの支度をし、専用の場所用の石鹸、うがい薬の用意をする。 歯ブラシの支度、ブラシ、タオル類…。 なるべくなら、ゆっくりゆっくりと支度をし、客の側に行く時間を一分一秒でも遅らせたい‥ (ふぅ~。そろそろ行かなくっちゃ…) バスルームを出て、足ふきマットを踏みつけながらふと顔を上げると、洗面所の鏡に映る自分の顔が思いっきりひきつっている…。 (……ハァ~…‥‥。) 溜め息を笑顔に変え覚悟を決めると、部屋のソファーでテレビを見ながら彩葉を待つ客の元へと、急ぎ足で向かった。 今夜もまた彩葉の長い長い夜が始まる……。
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