弐陣『声が聞こえた』

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  よく考えてみれば怪しい点はいくつでもあったはずだ。 ぎこちない女子の態度に、新手のいじめかと思うほど一緒に行こうと誘った友達には断られた。 気付かなかった自分が馬鹿だったということを悔しくも認めた少年が、歩みを止めて大きくため息をつく。 そんな気を抜いた瞬間、耳に生暖かい隙間風が当たる。 鳥肌が立ち、思わず身震いをして、ついつい周りを見渡すが当然何も無い。 「落ち着け俺!幽霊とかその類いの心霊現象なんてもんは全部科学的に証明できるもんなんだ!あとはそれをどこまで信じられるかってこと……大丈夫、大丈夫だ!幽霊なんていやしない!そうだろ?しっかりしろよ俺!!」 そう自分に言い聞かせてはみるが、どうもここは雰囲気が悪い。 周りを見渡してみれば剥がれかけた色あせたポスターやコンクリートが剥がれて覗いた白骨のように見える鉄骨、人の手のように見える何かの部品など、何でもかんでもそう見えてしまう物ばかりだ。 少年から強がりが消えていく。 「……出るかもなぁ」 懐中電灯を持つ手に汗がにじみ、さりげなく鉄の棒を拾い上げると、それを強くにぎりしめる。 「幽霊じゃないにしても、こりゃ何か楽しいこと見付けねぇとなぁ……怖さの元とれねぇだろ?」 そうつぶやいて少年は再び歩き始める。 恐怖を乗り越えたのか、ただ頭がおかしくなったのか、そんな状況の中で少年の顔は笑っていた。 彼の名前は大和 朔[ヤマト ハジメ]、どちらかと言えば頭がおかしくなった方の率が高いが、それでもこの物語の主人公である。
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